ド全体のサウンドが大きな塊となって、会場中を動き回っているようなイメージ。
痙攣し、浮き足立ち、テンションが常に高いレベルでキープされている。
「自由に演ることの責任、自分のプレイに責任を持とうと各プレーヤーに指示しています」。そんな言葉を聞くと既にフリージャズの「スガ塾」的な様相も呈しているのだから面白い。
■ロックよりもワルいフリージャズ
スガのピアノは非常に扇情的だ。鍵盤の上を駆けるように動く指先。圧倒的な早弾きなのだが、一音一音が明瞭に聞こえてくる。鍵盤の奥の方を、指先を立てながら、
高速で押さえていく姿を観ていると肘に相当な負担が掛かっているのではと心配もしたくなる。ところが「好きな音を出しているから、全く身体には負担なってない」というのだから、
こちらもじゃあ、もっともっと弾いてくれ、という気持ちにもなってくる。メーターが振り切れるまで鍵盤を叩いてほしい。
そんなスガがピアノを始めたのは小学校4年生のとき。バッハばかり弾いていたそうだ。グレン・グールドの例を出すまでもなく、バッハは解釈によって様々に演奏される。そんな中でも、
高校生のとき出会ったMJQのジョン・ルイスが弾くバッハが、スガに衝撃を与えた。クラシックばかり聴いていた耳にはそれが、とても「ワルい音楽」のように聴こえたというのだ。
「同級生が聴いていたロックよりジャズの方が、とてつもなくワルいもののように感じたんです」。そこから、もっとワルいもの、ジャズの深い部分へ到達するのに時間はかからなかった。
セシル・テーラー、山下洋輔を愛聴し、さらにはバークリーへ3年留学し、研鑽を積んだ。帰国後は大沼志朗、不破大輔、渋さ知らズ、さらには鈴木勲といった大御所とのセッションを繰り返している。
さて、自身のバンド、「リアルブルー」のコンセプトはもっと高いところにあるらしい。「ピアノのプレイよりも、バンドとしてのコンセプトを作り上げたい。矛盾しているようなことを追求したいですね。
フリージャズなのに聴きやすい、とか、早い旋律を弾いているのだけれど、全体として鈍く聴こえるとか」。また「メンバーも固定せず、参加するメンバーによって演奏の印象が変わってもいい」。
彼の目指すものは「人のやらない音楽」であり「音楽の領域を拡げていく」ことであるという。ここまでくれば、いままで使用してきた「フリージャズ」という言葉が表現として、いかに虚しいものかよくわかる。
彼は「音楽そのもの」を演奏しようと、自身を律しているのだ。「リアルブルー」で演奏するたび最も修行を積んでいるのは他でもない、リーダーである彼自身かも知れない。
(中林 直樹)