■テクニックではなく「人間」を出す
インタビューはお互いの印象を話すことろから始まる。スガダイローの印象は「グレイト! 難しい演奏をしていても時折見せる笑顔がナイスガイですね」。また、DVD本編にも少し登場するスガのバンド、リアルブルー(スガのピアノに加えてベース2本、サックス、トロンボーンなど大所帯)ともAxSxEは当日セッションをしたのだが「音が塊なところが良いですね。一見、カオティックなのですが、その響きが実に美しい。メチャメチャ好みです」という。
対してスガは「真面目な人でしたね。ただ、セッションする相手と合うか、合わないか、は関係ない。その場に一緒に存在することが大切だと思います」。現場に2人で存在し、互いの楽器を鳴らすこと。リハーサルや打ち合わせはしない、というのがこのアルバム全体を通してのコンセプトである。しかし、主催者がそれを敢えて設定しなくとも、この2人は初対面でテンションの高いセッションを繰り広げたことだろう。セッションに挑む際、構成やメロディーなどは、毛頭考えず、「自分という人間を見せればいいかな、と思っていた」とはAxSxEの言葉である。
「マーシャル(ギターアンプ)じゃないと弾けないし、マーシャル背負ってなんぼ、ですから」というAxSxEだが、「AxSxEさんのギターは、決してうるさくない。音がデカいのとうるさいのは違う。うるさい人とはセッションできませんね」とスガ。
セッション中はお互い目を合わせることがなかった2人。AxSxEは「あらかじめ決めておいた旋律に音を置きにいくな、そうすることは敵やと思ってます。脳の汗や心の汗をかいて、演奏中に真っ白になる瞬間がないとあかん」。予定調和やアイコンタクトで着地点を探ることは一切排除した結果、誕生したこの場限りの音楽。スガも同じだ。「出だしはAxSxEさんの感じをもらって弾き始めたんだけど、あとはデタラメ(笑)」。以前のインタビューでもスガは「他の演奏者が発する音を聴かない」という自身の主義を語っているのだが、それはここでも貫かれている。「やりたいことしかやらない。演奏中、人に合わせていても感謝されないということや、人に合わせることに向いてないと最近気付いたんです。自分が好きなことをやっている時にこそ、人は喜んでくれる、と」。
「今、思い返してもあの場面でこうしておけば、と振り返ることはどうでも良いこと。スガさんのピアノを聴きながら、ギターをわざと弾かない、という演奏もやってみた。ただ、ギターは最近練習してなかったので、そのツケが回って来たと思うところもありましたね(笑)。そのおかげで、ひょっとしたら自分の引き出しの20%くらいしか、発揮できてないかも知れません。でも、最終的に、ノウハウやテクニックが出せなくても、人間出せたからいいかな。満足してます」。
■フクロオオカミとオオカミ?
「自分は奈良生まれで、スガさんは鎌倉生まれですよね。2人の持つ音楽の重なった部分。ほら、昔数学で勉強した円と円とが重なる部分…」というのは、「セッションした曲に名前をつけるとしたら?」という問いに対してのAxSxEの答え。スガは「接点。もっと言うならオーストラリアに生息するフクロオオカミとオオカミ、かな。もともとは同じ種類だったものが別々に進化して、今に至っているイメージ。持っている武器が同じで進化の仕方が違うような」と、それぞれ互いの突出した部分を敏感に嗅ぎ分け、尊敬し合っているようだ。別々の日時、別々の場所で収められたインタビューで、しかも演奏している楽器も違うにも関わらず、だ。
AxSxEとスガダイローの顔合わせは、現在のところ、このたった一回。しかし、音楽を通してミュージシャン同士の魂が大きく揺り動かされ、覚醒していく様をCDやDVDを通して我々は体験することができるのだ。『BOYCOTT RHYTHM MACHINE II VERSUS』は、その意味でまぎれもなくドキュメンタリー作品なのである。
(中林 直樹)